三十男のピロートーク

パチスロ必勝ガイドのブログ「スロガイフラグ」で2005年から連載された木村魚拓のコラム。(当時)三十男がつぶやくピロートークには、甘さの中に苦味を隠した大人の男の在り様が綴られているが、ベッドで語り合うものとはまるで違う。

※毎週月曜アップ予定!!

その7

2020/03/23

 

 決して熱くはない、丁度いい湯加減の温泉に、肩まで浸かって吐息を漏らすあの瞬間、疲労や緊張が湯に溶けていくのがわかるあの瞬間と同じ緩みきったテンションで、普段はこのマニアと親戚にしか読まれぬコラムを書いているのだが、緩むどころか今はカチカチである。


 今少し前、私はネット麻雀に興じていた。トップと800点差の2着で迎えたオーラス。上家のリーチをかいくぐってこの手をものにすれば、このピンフドラ1をものにすれば、格上のカニクリームコロッケさんを押しのけトップになれるという極めて重大な局面で、横にいた嫁が小声でつぶやいた。


「……ヒロシ&キーゴー」


 返事をせずにいると、彼女はなおも続けた。


「キムラ…くん。あそこにヒロシ&キーゴーが……」


 指差す先に視線を向けると、そこにいたのはカブトムシと見紛うほど大きなゴキブリだった。


 この国に住むほとんど全ての人と同様、私もゴキブリがハマリの次に嫌いである。生かしちゃおけぬ、必ずや息の根を止めてやろうと強力な武器をオロオロしながら探しているとサササッ、その間に奴は身を隠してしまった。


 ったく、見つけた時点ではっきり言ってくれれば、手刀でスパーンッ、弱ったところをかかと落としでカツーンッというのは無理にしても、おろしたてのワサビとか、腐りかけのコーヒーとかで、敵のタマを取ってやったのに…。


「だって、しょうがないじゃん!! その単語を口にすらしたくなかったんだもん!!」


 いやそれにしたって、キーゴーはどうなのか。大都の忍魂(しのびだましい)が「にんたま」と略されているのを耳にすると、どうせ「忍」を音読みするなら「魂」も道連れに、「にんこん」と略すべきではないかと考えてしまうほど、略語には敏感な私だってキーゴーはさすがにお手上げだ。せめてゴッキーとか、クリスティアン・キヴとか、もっと気の利いた略し方が色々あるじゃないかと思うわけだが、正直今はそれどころじゃない。パソコンの裏からカサカサと出てこられても困るので、今週はこれにてドロンします。

 

 

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